牛の話。あるいはジオパークとは何か?

こちらは、左から双子のヤンボーちゃん、マーボーちゃん、てんきちゃん。先月生まれた子牛です。

地域おこし協力隊の棚次です。今日は、硫黄島の横山家のご好意でご自身の仕事場である牛舎を見学しました。牧場は集落から遠く、私などは立ち寄る機会がなかなかありません。そうした事情もあって興味深いものでした。

黒毛和牛を食べた人のなかで、子が茶色いことを知っている人はいったいどれだけいるだろうか?いい体験でしたので、今日は三島村の産業のひとつである畜産業をほんの少し紹介しながら『ジオパークとは何か?』について書きたいと思います。

ずばり、ジオパークとは何か?

この仕事をしていると必ず『ジオパークとは何ですか?』と質問されます。これはジオ関係者のあるある話だと思います。この質問の答えは、人によってさまざま。私なりの答えはずばり、こうなります。

『地球には 1. 大地があり、そこに 2. 動植物の生態系があり、3. 人も暮らしています。この3つの要素は、それぞれに関わりない閉じたまとまりではなく、実際は密接に関わりあっています。

ジオパークは、ジオパークと名を冠した地域の「 1.大地」「 2. 自然生態系」「 3. 人のくらし」が密接に関わった状態を、そのまま保護する取り組みです。保護をして、その遺産を将来のために生かすことが活動となります。』

はい。 文字だらけですね。 そこで牛の登場です。牛よ出動!助けて!

牛の力を借りて、この抽象的な話をもう少し具体的にします。先ほど紹介したジオパークを形作る3要素が、三島の風景のなかにどうあてはまるか見てみましょう。

「 1. 大地」=牧場の地形
「 2. 自然生態系」=その地形に適した動植物
「 3. 人のくらし」=その環境に適した仕事、現在は畜産業

 ジオパークでは、この3要素が関係している状態を土地の魅力として捉え、その均衡を壊さずに未来へ残したいと考えています。それぞれの要素をより具体的にすると…次のとおりです。

 

1. 大地=牧場の地形

まず、牧場のあるこの台地は、全長20kmの巨大噴火口のフチです。7300年前の巨大噴火のとき、マグマを吐き出した分だけ硫黄島の一部は陥没しました。陥没した土地は低地となり、陥没しなかった土地は台地のまま残りました。そして、ほぼ同時に巨大噴火の火砕流が、地面の凸凹を埋めて平らにしてくれました。低地は港に適しているため集落となり、台地は畑や牧場となりました。この特徴ある大地は、こうして生まれたのです。

 

2. 自然生態系=その地形に適した動植物

できた台地の環境は農地に適し、平原には牧草が育ち、牛はその草を食べます。

 

3. 人のくらし=その環境に適した仕事、現在は畜産業

かつての火山活動で生まれた台地は農地に適した環境で、やがて人が農業や畜産業を営み、現在に至ります。

このように、ここでは『大地』と『自然環境』と『人の営み』が、大きな時間の流れのなかで、互いに関係しあっています。そして、この関係が形成された地域は、三島村・鬼界カルデラジオパークの一部です。

 

まとめ

いかがでしたでしたか?今回紹介したお話は『ジオストーリー』と呼ぶもので、ジオパークの特徴を伝える物語のひとつです。ジオストーリーは他にもありますので、興味のある方はこちらをどうぞ。

ところで、横山さんの牛舎は、屋根と壁が一部ありません。昨年の台風で吹き飛んでしまったそうです。個人で修理できる規模でないので業者さんに頼むのですが、離島に来てくれる業者さんは引く手あまたで、なかなか順番がまわって来ないそうです。

三島村の島々は、大陸から離れており、海からの風がかなり強く吹きます。台風ともなれば、風、というより圧縮された空気の塊が猛烈な速さで道路を駆け抜け、並ぶ家々をゴウゴウとゆらします。家のなかでヒヤリとすることは度々です。

私たちは、他の何よりも自然が勝る場所で暮らしています。自然が人を殺めることもよくあります。この特性は、住民にとっては困難になりますが、一方で、もともと私たち人間は巨大な力が支配する秩序のなかで暮らしていることを実感させます。こうした体験は、環境破壊や地球温暖化やそれらを促す人間の経済活動について、子供達の想像力を育ててくれると私は考えます。おしまい。

おまけ
このブログでは、全国のジオパーク関係者にジオパークとの関わり方について聞いています。この企画を通して、色々な人の色々なジオパーク観が見えてくると思います。さっそく増野さんが質問してくれましたので、そちらもあわせてどうぞ。

おまけで子牛の哺乳瓶を紹介します。哺乳瓶が大きくてかわゆい。ではまた。

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