ジオパークというユネスコプログラムでは、地質だけではなく、自然・歴史・文化すべてを含めて、未来のことを考えます。というわけで、今回は地質じゃないお話です。港での紙テープのお別れは、ノスタルジックな風景ですよね。港に残る人と乗船者を繋ぐ紙テープは徐々に千切れ、たなびく色とりどりテープに、別れの悲しみと旅立ちの喜びが交錯します。
この、紙テープのお別れは、日本人のアイデアで始まった風習だと知っていましたか?1915年のサンフランシスコ万博で、笠居株式会社が紙テープを出品したのですが、大量に売れ残ってしまいました。移民でデパート経営をしていた森野庄吉がその紙テープを安く買い取り、万博のために海外船がたくさん来ていた港で「テープで別れの握手を!」と宣伝したところ、大いに売れたそうです。その後、この風習が定着したのはなぜか日本だけだったらしいです。情緒豊かな日本人に「別れのセレモニー」として、しっくりきたのかもしれません。
三島村では、子どもたちの卒業、先生の離任、ジャンベ留学生(大人)の修了、島外への引っ越しなどで島民が島を離れる時に、紙テープでお別れをしています。他の地域では紙テープを、船の上から岸壁の人めがけて投げたりすることもあるようですが、この方式だと紙テープが人に当たる危険があります。フェリーみしまでは、岸壁で紙テープをまとめて(写真参照)棒に通して、この一つ一つの紙テープの端を一つに結び、それをフェリーから垂らされた紐に括り付けて引き上げ、フェリー甲板にいる方々に配ります。紙テープが絡まずにうまく解けていくためには、甲板の方に配る際のコツがあるようで、なかなかうまくは行きません。それでも風に舞う紙テープはとても美しいです。岸壁に残った人も、船に乗って島を去る人も、片手にしっかり紙テープを握り、もう一方の手をブンブンと振って、別れを惜しみます。
紙テープは水に溶けるようになっているので、海に落ちたとしてもゴミにはなりません。しかし、なるべく船に引き上げて海に落ちないようにするために、係はテープが切れた後に紙テープを一生懸命巻き取ります。その際はお客さんもご協力してくださるので、とても助かります。
素敵なテープでの別れの握手、三島村の風物詩として大事にしていきたいです。