ジオストーリー・ジオサイト(硫黄島)
ジオサイト
ジオサイトは、自然と人類の歴史のなかで重要な出来事を、科学的・歴史的な裏付けをもって紹介する場所です。目の前の景色をよく知ることで、実はその景色はとても複雑で美しいものであることがわかります。ジオサイトはそうした世界の魅力を伝える場所でもあります。
ジオストーリー
ジオサイトは島内あちこちに点在し、そこで語られる時代も様々ですが、実はそれぞれが関わり合っていることがあります。ジオストーリーは、その関わりのある点をつなげた話(ストーリー)です。ばらばらに散らばった話をつなげるので、ジオストーリーで扱う時間と空間の範囲はとても広くなります。空間は地図で表す大きさに、時間は地球の誕生から現代までの長さになります。
人は自分が体験できないことを、物語によって想像の中で体験する能力があります。人はジオストーリーによって、日常生活では体感できない巨大な私たちの世界の実相を垣間見ることができるのでないでしょうか。
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7300年前にカルデラ噴火が起こり、島を縦断する断崖が形成されました。Aその後、5300年ほど前から活火山である硫黄岳が新しく成長をはじめます。B硫黄岳の山頂や山腹には多数の噴気孔があり、そこには多くの硫黄がみられるようになりました。C800年ほど前に硫黄島に配流された俊寛の物語にも、当時の人々が硫黄を採取して生計をたてる様子が描かれています。D硫黄岳の硫黄の採掘は昭和38年に終わりましたが、現在では硫黄を用いて火薬を調合し、特産品の線香花火に活用しています。E

A カルデラの縁
B 硫黄岳
C 噴気と硫黄
D 俊寛
E 線香花火
  • 1 硫黄岳 三島村・鬼界カルデラジオパークの象徴である硫黄岳。カルデラ噴火の終了後に新しく形成された活火山。現在も活発に噴煙をあげ、周囲の海中に温泉を吐き出し続けている。平家物語にも描かれていることから、少なくとも 900 年ほど前には硫黄の産地として有名であったらしい。硫黄鉱山としては昭和39年に閉山。その後は珪石の鉱山として利用されたが、それも閉山し現在にいたる。
  • 2 東温泉 硫黄岳の麓に湧き出す天然温泉。海を目の前に水道も明かりもない野趣溢れる名湯として名高く、世界中から秘湯ファンが訪れる。硫黄岳の火山ガスを溶かし込んで湧出する温泉は国内第二位の酸性度、pH 1.6 を誇る。湯だまりの岩肌には強酸性の環境を好むバクテリアが定着しているため緑色の湯に見えるが、温泉水そのものは透明。海に流れこむと海水と反応して淡青色となる。
  • 3 恋人岬 硫黄島の最南端に突き出した岬。東側はカルデラ壁、南から西は海蝕崖にかこまれた断崖にそびえる。稲村岳と稲村岳や海岸線の温泉群、遠く竹島のカルデラ壁や種子島、屋久島までも見わたせる。「恋人岬」とも呼ばれる。
  • 4 カルデラ壁 7300年前の鬼界カルデラ大噴火(アカホヤ噴火)によって形成された火口の縁に当たる場所。高低差が最大で 300 m ほどの断崖になっているが、この崖を横断して西側の台地に上る道路があり、カルデラ内を一望する絶景が楽しめる。
  • 5 岬橋 永良部崎へと続く細い岬の稜線にかけられた橋。硫黄島港、集落、硫黄硫黄岳を一望できる。岬の東側は赤茶色の温泉水が広がる硫黄島港、西側には透明な海水が広がる東シナ海。コントラストが美しい。力強く火山ガスを吐き続ける硫黄岳の姿も美しい。
  • 6 硫黄島港 フェリーの発着場であり、島民の生活の場でもある硫黄島港。湾内から温泉が湧き出しており、その鉄分が常に海を染めている。温泉水が描き出す模様は、様々な気象条件によって刻一刻と変わりゆく。まさに地球が生きていることを実感させてくれる景色である。魚も釣れる。
  • 7 熊野神社 平家転覆の密議が明るみになり捕らえられ、硫黄島に配流された平判官康頼と丹波少将成経が勧請した神社。壇ノ浦で入水された安徳天皇が壇ノ浦から逃げ延びて硫黄島に辿り着き、この地に住まわれたとされる。熊野神社は島津家から厚遇され、現在は鹿児島市内の照国神社が祭司を務める。
  • 8 安徳帝 壇ノ浦で入水された安徳天皇が実は逃げ延び、硫黄島で暮らしたとされる言い伝えがある。妃となった櫛匣局をはじめ側近数名の墓地とされる石塔がのこされている。安徳天皇の墓地や伝説は全国各地に点在しているため、定かではない。
  • 9 大浦港 絶壁に囲まれた美しい湾。アカホヤ噴火の前から噴火後にかけての一連の地層が、大迫力をもって露出している。波が穏やかなため、夏は海水浴場として島民に愛されている。
  • 10 俊寛堂 平家転覆の密議が明るみになり捕らえられ、俊寛、成経、康頼の三人は硫黄島に配流された。共に流されてきた康頼と成経は赦され都に帰ったが、取り残された俊寛はやがて絶食して自害した。その死を悼んだ島民が建てたお堂がこの俊寛堂。
  • 11 坂本温泉 集落から離れた坂本に湧きだす温泉。泉質は滑らかで、数十年前までは湯治場として利用されていた。
  • 12 平家城露頭 アカホヤ噴火以前から硫黄岳や稲村岳の活動を含め、現在に至るまでの鬼界カルデラ周辺の噴火史が記録された重要な露頭。アクセスがよく観察もし易いため、世界中から研究者が訪れる。
  • 13 平家城展望台 もとは平家の見張り台であったとされる展望台。穴の浜温泉の変色海水がよく観察できる。またウミガメが泳ぐ姿がよく見えるスポットでもある。天気がよければ九州本土や桜島の噴煙も見渡すことができる。
  • 14 昭和硫黄島 1934-35年の噴火によって形成された、日本で最も新しい島。南の海底からは現在も活発な噴気があり、特殊な生態のタイワンホウキガニが生息する。島にはまだほとんど植生がない。