ウエディの硫黄島滞在記3「外来種って何でしょうか?」後編

はたして本当に外来種=悪なのか?

前回は、硫黄島での孔雀調査から見えてきた影響について見てきました。

今回は、そんな孔雀や外来種は「悪」なのか?ということについて考えたいと思います。
さて、外来種=悪というイメージは確かにあるようですが、はたして本当にそうなのでしょうか。

ひとつ、例を出して考えてみます。

在来種が善で、外来種が悪なら、日本で一度は絶滅したトキやコウノトリはどうでしょうか?

日本のトキやコウノトリは一度、食料としてや羽毛の利用などの理由で乱獲され、絶滅してしまいました。
そんなトキやコウノトリを日本に復活させる取り組みが行われています。しかしながら、今日本で野生復帰したといわれているトキは中国、コウノトリは中国、ロシアから譲渡された個体の子孫です。ということは人為的に持ち込まれているから、外来種なのでは?

しかしながら、外来種というカテゴリーに入れられるはずなのに、トキやコウノトリは「再導入(Reintroduction)」だそうです。

一方では外来種を悪者にしておきながら、他方では外来種ではなく再導入と呼ぶ。また。元々生息していた種類だったら、外国由来でも外来種ではない扱い。自分たちの都合の良い様に表現を変えるのには違和感を覚えます。

表現には疑問を抱きますが、再導入の取り組みは素晴らしいものとなっています。なぜなら、この取り組みはトキやコウノトリの再導入という目的のために、生き物たちが暮らしやすい環境の復元や生物多様性を豊かにするという側面もありました。また、コウノトリの再導入の前には「稲が踏み荒らされるから」と反対の声が多かったそうですが、この取り組みに協力した地域は、これら生き物との共生を通して地域全体が注目されることになり、それが地域活性化につながった事例となっています。

再導入に取り組んだ人たちにとってトキやコウノトリは元々、日本にいたから外来種なんて考えずに日々奔走していたのかもしれません。また、再導入させた人たちの中にも葛藤があったかもしれません。

個人的には再導入や導入などの方法について生物多様性の観点から答えると賛成ですが、農家さんなどの立場から考えると、反対の気持ちもあります。

コウノトリの再導入の前には「稲が踏み荒らされる」からと反対意見が出ましたが、これって大変なことですよね。
農家さんが時間と手間暇かけて育てた作物を台無しにしてしまうわけですから。

僕は島根県で農家さんに聞いたイノシシ被害の話がとても印象に残っています。
「あいつらが田んぼに入って、稲に触れると獣の匂いが移って売り物にもならないし、食べもできない」
普段、当たり前のように食べれているお米や野菜、果物、お肉、魚って当たり前ではないことに気づかされました。

話が逸れてしまいましたが、この話から判断すると外来種とか、在来種って関係なく被害が出ているということです。なので、農作物被害や生態系に被害を出さないように対策を練りに練れば、生態系に良い効果をもたらす外来種や再導入は問題ないと思います。トキやコウノトリがそのモデルケースだと思っています。

害をゼロにするのは難しいけど、人にとって、生態系にとって、害や負担が少なくなったら、外来種も受け入れられるのじゃないかと考えています。

外来種たちは人間の都合で持ち込まれ、逃がされて結局、在来種に悪影響を及ぼす悪い奴という認識になってしまいましたが、外来種の捉え方に対して、今後はさらに違う次元で考えるべきなのかなと思っています。外来種だからっていう考え方ではなく、外来種だけどもしかしたらっていう認識が増えていけば、実は詳しく調べたら、生態系に良い影響与えてたよとか、生態系の一部になってバランスを保っているよとか、そういうことも分かってくると思います。

そうした、外来種の捉え方の認識を多くの人たちに変えてもらうためにも、硫黄島のインドクジャクと固有種のトカゲの関係性の調査、インドクジャクが住民の人たちの農作物や畜産に被害を与えない工夫、共存できる環境づくりなど、考えていきたいなと思っています。硫黄島のインドクジャクたちが外来種汚名返上のきっかけになるように頑張ろうと思います!

最後に!元々の原因は人によって持ち込まれたこと、育てられないなら買うな!興味で買うな!ということを強く言いたいです!

もう悪者とされる外来種を増やさないためにも人間が行動を変えましょう!

また、外来種に限らず、近年イノシシやシカなどの獣害問題が深刻化しています。
僕自身そうした問題を考えるときに被害を受けている人の立場と動物の立場で物事を考えるため、いつも葛藤しております。

今回の記事もそうした葛藤の中で書きました。

でも、地球は人間だけが住む世界ではないので、今回は動物の立場の主張が強くなっています。ご了承ください。

生き物たちも含めて、みんなが暮らしやすい環境のために。

読んでいただき、ありがとうございました。

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